読書余滴            平成21年7月3日     戸張 道也

「微分積分を知らずに経営を語るな」 内山 力 php新書
この本で、微積的思考習慣の必要性を認めさせられます。著者は東京工業大学情報科学科(位相数学専攻)ビジネスコンサルタント、中小企業診断士

プロローグ

明日を読むには微分・積分   シンプルな戦略
セブンイレブン「売れるものを、売れるときに、売れる量だけ買う」トヨタ「ムダ、ムリ、ムラをなくす」花王「自社製品を店舗にいくつ置いたらよいか」
彼らが使っている「これしかない」という方法が、微分・積分です。
微分・積分思考法は経験もカンも度胸もない人が、経験もカンも度胸もあって明日を読めそうな人に勝つための方法なのです。

コラム1 定義すれば論理的に見える
論理性「物事を組み立てていく方法」定義「そう決めたことで、なぜとは聞かないこと」定義以外のことは「論理的に説明できる」

第1章 微分・積分を30分で理解する

デジタルは「切れている」(微分)「アナログ」は「つながっている」〔積分)
音楽を微分するとCDになる。 CDを積分すると音楽になる。
小さく区切っていくことを「微分」といい、つなげてゆくことを「積分」という。
ビジネスグラフ 知りたいものを縦軸、それを知る上で必要なものを横軸。
伸び(傾き)「横軸が1進むと縦軸の数字がいくら上がるか」
横軸の「ちょっと進む」ということをデルタといいます。
「ちょっと進む」の幅を限りなく「無限」小さくしていくと、接線が引ける。
直線が右へ1進むといくつ上がるかという接線の伸び〔傾き)が「微分係数」。
微分係数をを何らかの式であらわせれば、コンピュータで計算できる。
しかしコンピュータは適当に線は引けません。
グラフを「大体どんな形にするか」は人間が決めなくてはなりません。「山形」(確率)、「放物線」、「指数曲線」など。小学生の身長の例では「山形」
ヒストグラム(棒グラフ)
例:小学生身長。タテに人数・確率、ヨコにランク〔身長別グループ)
身長のランクを細かくし、棒の頭をつないでいくと曲線がみえる。
棒の高さは確率。棒と棒の間の面積を計算するのが積分。
積分はコンピュータが計算してくれる。 表計算 グラフ 

第2章 微分がわかれば利益が上がる

未来を微積で予測する。予算は「仕事をやる前」に、「やった結果」を予測。
限界利益って知っていますか: 限界利益=伸び=微分係数=稼ぐ力
限界「あるものが1単位増えることで変わる量」「デルタ」「微分」
限界利益:「あるものが1単位増えると、それに伴って増える利益」
正規化」:複雑なもの(現実)を単純なもの(非現実)に変えること
単純な例で考え正規化して、それを一般化(現実に戻す)していく。
マネジメントと微積が結びつく
今度は利益を会計の世界で考える
目標利益を目標販売量で
(目標利益+経費)/ 1単位あたりの限界利益 = 目標販売量   / 割る
目標利益から目標売上高を出す
(目標利益+経費)/ 限界利益率 = 目標売上
限界利益率 = 粗利益率 = アラ利益率 = 粗利 / 売上
粗利益 = 売上 ー原価〔変動費)
限界利益率が違うなら事業部制プロジェクト別にする
目標と予測を一致させる努力:粗利が最大になる価格戦略、経費も変化させる
予算を微積的思考で理解しよう:価格戦略、原価予算、経費予算

第3章積分がわかれば在庫が減る

在庫管理でビジネスを勝ち抜く
予想ではなく予測を行う
過去のデータを使って、「ある予測のやり方」で予測値を出し、しばらくして実績値がわかる。この実績値が過去のデータに追加され、次の予測値を出す。
たまたまという発想
「今日はたまたまはずれただけ」バラつきとたまたま・バラつきの「見える化」
標準偏差、それぞれの数字が平均からどれくらい離れているかを平均したもの。
「偏差(バラツキ)を2乗してその平均をとり、その平方根をとる」このやりかたに合意する。すっきり山形で考える
ヒストグラム(棒グラフ)を書く。頂点をつないで曲線にする。
1 中心に行くほど高い2 平均値を中心として左右対称 すつきり山形>正規分布:現実離れした仮定ではない。 くりかえし現象でもっとも多いパターン。表計算に平均、標準偏差、範囲を入れる。
さあいよいよ在庫量を決めよう 「欠品率を指定して在庫量を計算すること」
10% あまり欠品しない5% めったに欠品しない1% 欠品は許されない
在庫をさらにつっこんで考える

安全在庫=10%の欠品率を許す在庫量=平均値(量}+安全係数*標準偏差
標準偏差を小さくできれば在庫が減る(食品スーパー)
曜日別に需要を考え、平均値(量)、標準偏差を別々に計算すれば、標準偏差(バラツキ)は小さくなる。「ムダ(欠品、売れ残り)、ムリ(欠品率)、ムラ(標準偏差)をなくして効率のよい経営を目指す。
リードタイムをしのぐ:発注スタイル
1)発注点発注」最低在庫量(発注点)で一定量(発注ロット)を発注する
発注点=調達リードタイム(例3日)の「平均需要(1日200個3日で600)+安全係数(欠品率10%で1.3)*標準偏差(1日分の標準偏差(例25個)
3日分3をルートで開くと1.7倍)=600+1.3*25*1.7=655 
在庫削減はスピードとコンスタント
調達リードタイムの短縮、1日当りの標準偏差を下げる「使う量を均等化する」
(2):発注時点特定(例月曜)その時点で、需要予測し、発注量をきめる
発注量=(発注サイクル(7日)+調達リードタイム(3日)間の「平均需要量」(1日200個*10日)+安全係数(10%で1.3)*標準偏差{10日分(1日25個*10日のルート)」−発注時点の在庫量
10日分の安全在庫=2000+100(1.3*25*ルート10)=2100
標準偏差を小さくする(コンスタント)発注サイクルの短縮(スピード)
(3)在庫管理SCM(メーカー、卸、小売の同盟

アメリカウオールマート:「エブリディ ロープライス」
在庫はすべてスピードとコンスタントで削減できる

第4章 微分積分マーケティング: 微積を拒否するマーケティング

商品ライフサイクル、4っの時期
売り上げをタテ軸、時間(期間経過)をヨコ軸
1導入時:商品認知が未だ2成長期:伸びが大きい3成熟期:飽和4衰退期
伸び>微分係数>伸びの変化傾向を見逃さない>トレンドに敏感
売上を面積で見る:縦(売上)横(時間):衰退期も意外と面積が大きい。
導入期、成長期:微分係数プラス 衰退期:微分係数マイナス
発売日以来24月の販売個数をタテヨコに月をとる
表計算で散布図作成:回帰式、回帰直線
販売価格は微積で決めろ:価格弾力性
最大の粗利を出す価格は:粗利をタテ軸 価格をヨコ軸で考える。
(1)カスタマーマーケテイングにも微積を使おう
1顔の見えないマーケテング(エリアマーケテイング)
点(消費者)を線から面(エリア・地域)へ、マーケットを積分する。
パイ:消費者のマーケットに求める需要
点を人口・世帯数でとらえる:飽和エリアを見つける:エリアのパイの総量=積分の面積:人口で割って1人当たりのユニットパイを算出。
次に成長エリアで同様計算
エリアマーケティングは、点をつなぎ、線にして、これを積分して面とし、面ごとに微分しながら戦略をたてる。
(2)ロイヤルマーケティングと微積の関係 顔の見えるマーケティング
ロイヤルカスタマー(その企業の得意先)中心のマーケティング
大切さ>貢献度>ABC分析>顧客を貢献度の高い順に並べる
縦軸を累積売上、横軸を顧客。売上NO1顧客、NO2顧客の売上累積と続ける。
顧客をAロイヤルカスタマーBロイヤルカスタマー予備軍 Cその他に分類。
曲線にして伸び(微分係数)を考える。微分係数はABC順に小さくなる。
売上を積分すれば、ロイヤルカスタマーの大切さがわかる。

第5章 微分積分で顧客満足

品質は数字で表せる「測れないものは品質ではない」品質は数字。世の中に数字で表せないものはない。数字で表す前の状態「実体」
品質をがんばって定義する
製品の品質:1設計品質>高い品質を目指して設計されている>設計仕様
      2製造品質>品質>どれくらい設計仕様どうりにつくられたか
品質 =製品機能 / 設計機能 =< 1
品質をがんばって測る  
 品質管理 = 1品質測定2品質向上
不良品>設計仕様どうりに作られていないもの 許容範囲の考え
異常>設計仕様の許容範囲をこえてしまう
良品>ひとつも異常のない製品
不良品>いくつかの設計仕様のうち1つでも異常のあるもの
品質保証>ある測り方である許容範囲に入っていることを保障する
エラーは必ずある > 1良品を不良品と判断 2不良品を良品と判断
不良率をプロットしてみる 不良率 製品全体のうち不良品の占める割合
不良率を縦軸 テストした時間を横軸にしてプロットする。
品質基準を決める 
縦軸を良品率 横軸をコスト
コストを少し(デルタ)だけかけると品質がどれくらいあがるか微分係数(伸び)、コストパフォーマンス
テストの止めどきを考える 良品率がXXになったとき やめどき=品質基準
テスト段階の微分係数 製造方法変更、
顧客満足度をあげる  仕様適合度 = 設計仕様 /  絶対満足
1設計適合度をあげる>仕様適合度>満足いただける製品>マーケティング
2品質 / 価格 をあげる>品質対価格>品質向上、コストダウン>生産
顧客満足度の動きが微積でわかる>品質基準たとえば製品容量を変化させたとき
顧客アンケートの点数の平均・標準偏差・範囲をグラフ正規分布で見る
品質基準を変えて次のアンケートの点数>正規分布>前のグラフと重ねて見る
第6章 微分がわかればコストが下がる(略)

エピローグとして

かりに本書の内容のすべてがわからなかったとしても、だいたいわかつたつもりになってほしい。私はビジネスにおけるプロフェショナルな数字のつかいかたは、この「つもり」が大切だと思います。多少誤解があつても、わかつたつもりになれば、逃げないで数学に正面からぶつかったことになります。「数学を恐れない」ビジネスマンになったことは事実でしょう。
数字の変化を敏感に、デルタにキャッチ〔微分)し、その変化をつなげて、対極的に明日を読める(積分)と胸を張ってもよいと思います。