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特殊支配同族会社の業務主宰役員の給与のうち給与所得控除相当額を法人税等の対象とする改正(法人税法改正)
特殊支配同族会社
この名称のとおり、的を絞った会社を定義していて、名称からは、きわめて特殊会社と思われますが、実際、特に首都圏においてはかなりの数の家族経営同族会社が対象となります。除外されるのは同族でない株主が10%を超える会社ですが、中小企業の経営は同族従業員により成り立っていますのでほとんど該当します。 国税庁タックスアンサー 参照
業務主宰役員
主宰者、代表者、社長です。給与の最高額を受ける役員1名となります。この代表者が受け取る給与の総額に対する給与所得控除を下記の条件で法人税の対象とします。ほぼ200万円前後ですから、法人税負担は一社あたり、約80万円増加します。増税金額は、法人所得に比例せず、主宰役員の給与が同額であれば、法人所得100万円の会社も2000万円の会社も同金額です。
基準所得金額
基準所得金額は一見すると、法人の所得の意味と誤解されそうですが、業務主催役員給与と法人所得の合計額が800万円を超える事業年度で判定しますから、ごく零細規模を除き、多数の同族会社が該当します。また過去3年間の平均で判断されますので、税務調査等による修正申告で10万円所得修正増の結果、条件に該当した場合、4万円の負担増ではなく、給与所得控除の益金加算分で、84万円の増加になることもないではなく、不安です。
給与所得控除相当部分=損金不算入金額
業務主宰役員給与額 |
損金不算入となる金額 |
〜 650,000円 |
業務主宰役員給与額の全額 |
650,001円〜 1,800,000円 |
業務主宰役員給与額×0.4 (65万円未満の場合は65万円) |
1,800,001円〜 3,600,000円 |
業務主宰役員給与額×0.3+180,000円 |
3,600,001円〜 6,600,000円 |
業務主宰役員給与額×0.2+540,000円 |
6,600,001円〜10,000,000円 |
業務主宰役員給与額×0.1+1,200,000円 |
10,000,001円〜 |
業務主宰役員給与額×0.05+1,700,000円 |
通常平成19年6月末申告期限の法人(3月決算法人)から該当します。
法律施行の結果の予測
例 特殊支配同族会社で基準所得3年分平均が800万円を超える場合
1.法人所得100万円 主宰役員年給与720万円 主宰役員年給与対応給与所得控除額192万円が益金加算される。 従来法人税等40万円 改正法人税117万円 増税額 77万円となる。 (実効税率40%とする)
2。規準所得が800万円程度の同族会社も3000万円を超える同族会社も、主宰役員給与が同額(例えば720万円)であれば法人税負担増額は変わりません。小規模同族会社を対象とした一種の法人税等均等割の新設となります。およそ一社あたり平均70万円前後の税負担増が予測されます。
3.また規準所得額が、800万円未満となっていても、税務調査等(通常3年間分)による修正等で例えば30万円の申告漏れ等の発生のために3年平均規準所得800万円超になると、法人税12万円の増加だけではなく、主宰役員給与600万円の場合は、法人税は約82万円の増加となります。
結論
以上3点を考えると、租税負担の公平性と安定性並びに担税力に不安が残り、特殊支配同族会社という極めて特殊な定義のようですが、実際は多くの同族会社に的が絞られている今回の改正は、戦後60年間でも、特異なものに思われます。 課税までは1年間の期間がありますが、シュミレーション等の方法で十分な資金対策等が必要です。
対策
1.資金計画の検討 2.法人形態の検討 3.役員給与の検討 4.先行投資の検討 5・役員構成の検討 6.所得計算の検討
参考
立川法人会ホームページに税額シュミレーションがあります。 愛知中小企業家同友会HPに要望書があります。 法人会等の18年度改正要綱に対する意見書にはこれらの点に触れられていません。 国会・業界・学会等においても、本年度初頭からの諸事件の報道に隠れて論議が見えません。特殊支配同族会社という定義で特殊問題とされたようです。
(法人税) |
特殊支配同族会社に該当する法人が業務主宰役員に対して支給する給与の額(以下「業務主宰役員給与額」といいます。)のうち、給与所得控除額に相当する部分の金額は損金の額に算入されません。 ただし、特殊支配同族会社の基準所得金額が800万円(一定の場合には3,000万円)以下である事業年度などについては、この規定は適用されません。 なお、この規定は、平成18年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。
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